My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



漆黒の闇の様な鎧を纏った男

歪んだ口元が不気味な笑い声を産んでいる

そして、私を見つめるその瞳は狂気に満ちている



以前も目にした事のある姿

この国を地獄に陥れた男

両親と兄様を殺した、男




「ゼファ―っ」




唇を噛みしめて、憎い男の名を呼ぶ

竜族を滅ぼし

アレンの両親をも殺し

この世界を自分のものにしようと企む、悪魔の様な男




「これはこれは、私の名を憶えて下さっていたとは」

「ふざけるなっ!! 私は貴様を決して許さないっ!!!」



不敵な笑みをその顔に浮かべて、深々とお辞儀をしたゼファーに吐き捨てる

握った剣がギリっと音を立てた



「クククッ。許さないとは可笑しな事を言う。自分の今の状況をみたらどうだ」

「――っ」

「――そういえば、先程も同じ様な事を言った男がいたな」



唇を噛みしめた私を横目に見ながら、どこか面白そうに唇を触るゼファー

しかし、その言葉を聞いてドクンと心臓が鳴る




まさか

まさか





「銀色の髪をした男だ。愚かにも私に剣を向けた。その度胸と強さは褒めてやりたい、が―――竜族の私に敵うはずがない」




そう言ってニヤリと笑ったゼファー

途端にクラりと世界が歪む




「まさ、か...」

「可笑しかったぞ。死ぬ間際まで、許さない。と私に言っていた――哀れな男だ」




そう言って天を仰いで高笑いしだしたゼファー

不気味な声が世界に満ちる