―――‥レイア




婚沌とした世界の中で、不意にアレンの声が耳を掠める

駆けていた足を思わず止めて、辺りを見渡した



それでも、見える景色は変わらず色を失っている

もちろん、アレンの姿など、どこにもない




「レイア様?」




そんな私の様子を見て、不思議そうに首を傾げるグレイス

その声で我に返って、自嘲気に微笑んだ




「空耳..か」

「え?」

「――なんでもない。行こう、グレイス」




未だ不思議そうに首を傾げるグレイスに微笑みかける

そして、再び足を進めて、騎士達が集まる広間まで駆けていく



――残っている兵の数は数えるほど

皆、憔悴しきっている



そんな騎士達の隣を通って、見慣れた馬に飛び乗る

馬上から見た世界は、まるで世界の終りを迎えている様だった


そんな世界を瞳の奥に閉じ込める様に、一度強く瞳を閉じる





―――アレン





心の中で愛しい人の名を呼んで、ゆっくりと瞳を開けた