小高い丘から世界を見下ろす

ぞくぞくと集まってくる騎馬隊

その国々の旗が、風になびいて揺れる



そんな世界を見下ろして、思わず目を細めた

まだ、足りないと思って




「お呼びでしょうか、アレン様」




どこからともなく声を掛けられて振り返ると、すぐ後ろで跪いている男がいた

キルトの騎士で、俺と他国との伝達役になってくれている男だ




「集まっている兵の数が知りたい」

「――は。およそ、5万ほどかと」




――5万。

告げられた言葉に心がざわつく

ガスパルの軍は、およそ7万

まだ、足りない




アネモスを出て、今日で2日目だ

もう残りの時間もない

明日の朝には、ここを発たなければ




「近隣の国もアレン様の招集に応えて、ただ今こちらに騎士団を向かわせているとの事です」

「いつごろ到着の予定だ?」

「おそらく、明日には」

「それでは遅い。使いを出して、足を速めさせてくれ」

「――は」



小さくそう言って、男は音もなく姿を消した