「ホリス――頼む‥行かないでくれっ」
「姫。私はこの国を守護する一族の者です。王国を守る事が私の役目」
「命を捨てる事が正しいと言うのかっ?」
「国を守って死ねるのならば、本望でございます」
涙がポタポタと散る
そんな姿を、どこか悲しそうに微笑んで見つめるホリス
「時間です。姫」
「嫌だっ!」
背を向けようとするホリスに駆け寄ろうと足を前に出す
すると、その間に騎士が立ちはだかった
「嫌だっ! 行くなっ! ホリスっ!」
虚しく響く声が世界に落ちる
止めようのない時間が、死の匂いを強くする
「アレンとゲルに伝えてください」
すると、微かに振り返ったホリス
口元に微かな笑みを浮かべている
「会えてよかった、と」
そう言ったホリスは、一度も振り返らずに足を前に進める
その足取りに微塵の迷いもない
「ホリス!――行くなっ!」
月が雲に隠れて、世界を闇の中に戻す
喉が枯れるまで叫ぶ
腕を押さえる騎士達の腕から逃れようと、体を動かす
そんな中、微かに聞こえた声
「お幸せに。姫」
その言葉を最後に
ホリスは姿を消した



