My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



「ホリス――頼む‥行かないでくれっ」

「姫。私はこの国を守護する一族の者です。王国を守る事が私の役目」

「命を捨てる事が正しいと言うのかっ?」

「国を守って死ねるのならば、本望でございます」



涙がポタポタと散る

そんな姿を、どこか悲しそうに微笑んで見つめるホリス




「時間です。姫」

「嫌だっ!」




背を向けようとするホリスに駆け寄ろうと足を前に出す

すると、その間に騎士が立ちはだかった




「嫌だっ! 行くなっ! ホリスっ!」




虚しく響く声が世界に落ちる

止めようのない時間が、死の匂いを強くする




「アレンとゲルに伝えてください」




すると、微かに振り返ったホリス

口元に微かな笑みを浮かべている




「会えてよかった、と」




そう言ったホリスは、一度も振り返らずに足を前に進める

その足取りに微塵の迷いもない




「ホリス!――行くなっ!」



月が雲に隠れて、世界を闇の中に戻す


喉が枯れるまで叫ぶ

腕を押さえる騎士達の腕から逃れようと、体を動かす



そんな中、微かに聞こえた声




「お幸せに。姫」




その言葉を最後に

ホリスは姿を消した