「私は、兄の様に立派に戦えたでしょうか?」
「――」
「ただ1つ、最後まで姫様のお側にいられない事が、悔いてなりません」
どこか透き通った笑顔でそう言うホリス
死を目前にした者の笑顔
覚悟を決めた者の笑顔
「側に、いてはくれぬのか?」
「――姫」
震える私の言葉を聞いて、ゆっくりと瞳を細めたホリス
その姿を見て、涙が溢れる
胸が締め付けられて、息もできない
「あなた様に仕える事が出来て、幸せでした」
「――」
「生まれ変わっても――お側に」
そう言って、私の体をゆっくりと離して膝を折ったホリス
月明かりに照らされた髪が、宝石の様に輝いている
すると
「ホリス様」
世界の端で誰かの声が聞こえる
声のした方に顔を向けると、階段の入り口に1人の騎士が跪いていた
その姿を見て、勢いよくホリスに向き直る
――時間だ。
そう思って
「――ホリス...嫌だ」
どうして死ななければならない
どうして命を捨てる様な事を
どうして世界はこんなにも冷たい
どうして神はいつも私から大切な人を奪う



