My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



「私は、兄の様に立派に戦えたでしょうか?」

「――」

「ただ1つ、最後まで姫様のお側にいられない事が、悔いてなりません」



どこか透き通った笑顔でそう言うホリス

死を目前にした者の笑顔

覚悟を決めた者の笑顔




「側に、いてはくれぬのか?」

「――姫」



震える私の言葉を聞いて、ゆっくりと瞳を細めたホリス

その姿を見て、涙が溢れる

胸が締め付けられて、息もできない




「あなた様に仕える事が出来て、幸せでした」

「――」

「生まれ変わっても――お側に」




そう言って、私の体をゆっくりと離して膝を折ったホリス

月明かりに照らされた髪が、宝石の様に輝いている



すると




「ホリス様」




世界の端で誰かの声が聞こえる

声のした方に顔を向けると、階段の入り口に1人の騎士が跪いていた


その姿を見て、勢いよくホリスに向き直る



――時間だ。

そう思って




「――ホリス...嫌だ」




どうして死ななければならない

どうして命を捨てる様な事を



どうして世界はこんなにも冷たい

どうして神はいつも私から大切な人を奪う