「ご無礼を...お許しください」
耳元で囁かれる言葉
透き通る声が鼓膜を震わせる
花の揺れる音だけが響く世界
微かに聞こえるのは、互いの心臓の音のみ
でも
「夜が明けたら、残りの騎士達を連れてガスパルに奇襲をかけます」
小さな声が世界を壊す
その言葉の意味を理解するのに、時間はかからなかった
勢いよく振り返ると、どこか悲しげに微笑むホリスと目が合った
美しい銀の髪が、風に乗って流れていく
「何を...言って――敵うはずないだろう」
「勝とうなどとは思っておりません」
「では..なぜ」
大きく揺れる自分の瞳
その様子を見下ろすホリスが、一度私の前髪をすいた
「アレンが戻ってくるのは、3日後。今日で2日目です」
そう言ったホリスの言葉でピンとくる
受け入れがたい現実が脳裏に過る――
「時間...かせぎ」
零れた言葉は風に乗って消えた



