My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



「何だと?」



徐々に怒りに満ちていくユアン王の表情を見ながら、跪いていた体を起こす

まわりにいた騎士達が、俺の動きをじっと見つめながら剣に手を添えている




――〝3日だ。それ以上はもたない″――




不意にホリスの声が脳裏をかすめる


――そうだ

こんな所でもめている暇はない

一刻も早く、兵を集めなければ




コツコツと大理石の床に俺の足音が響く

誰一人動かない世界の中で、変わらず輝くキルトの紋章

そして、その隣でも同じ様に輝きを放つ竜族の紋章



俺の持つ王家の石にも彫られている、もの



戦士の頂点の証

同盟の証―――





「陛下は、竜族と交わした同盟をご存じで?」

「竜族とだと?」

「――えぇ。互いの招集には、必ず答える。と」

「それがどうしたと申すのだ!? 竜族はとうの昔に滅んでいるではないか!!」




大きな体を揺らしながら、天を仰ぎ高笑いするユアン王

同じ様に周りにいた騎士達もクスクスと笑いだした



「――その同盟を今、果たしていただきます」



しかし、俺の言葉を聞いて再び世界が沈黙の中に沈む

ピタリと動きを止めた王も、俺を睨みつけた