My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



「世は援軍など出さぬぞっ!」




すると、俺の言葉の先を読み取ったのか、大きな体を揺らして勢いよく立ち上がったユアン王

その瞳は血走り、大きく揺れている




――風の噂で聞いた事がある



他国に呼ばれていたキルトの王は、自国へ帰る途中、ガスパルの大軍に襲われたと

そして多くの騎士達を失い、己の命すらも危うかったと



だからだろうか

こんなにもガスパルに恐怖心を抱くのは





「――陛下」

「何も言うなっ! この話は終わりだっ!」

「しかし陛下――」

「下がれっ! その目で世を見るなっ!!」




声を発する度に大きな声で遮られる

目に見えない何かに脅える様に、ユアン王は勢いよく立ち上がり、俺達に罵声を飛ばした

そして持っていた美しい装飾がされた短剣の鞘を俺の瞳に向けた




「――陛下。これは、お願いではございませぬぞ」




シンと静まり返った部屋の中に俺の声が落ちる

その言葉を聞いてピクリと眉を震わせたユアン王