「世は援軍など出さぬぞっ!」
すると、俺の言葉の先を読み取ったのか、大きな体を揺らして勢いよく立ち上がったユアン王
その瞳は血走り、大きく揺れている
――風の噂で聞いた事がある
他国に呼ばれていたキルトの王は、自国へ帰る途中、ガスパルの大軍に襲われたと
そして多くの騎士達を失い、己の命すらも危うかったと
だからだろうか
こんなにもガスパルに恐怖心を抱くのは
「――陛下」
「何も言うなっ! この話は終わりだっ!」
「しかし陛下――」
「下がれっ! その目で世を見るなっ!!」
声を発する度に大きな声で遮られる
目に見えない何かに脅える様に、ユアン王は勢いよく立ち上がり、俺達に罵声を飛ばした
そして持っていた美しい装飾がされた短剣の鞘を俺の瞳に向けた
「――陛下。これは、お願いではございませぬぞ」
シンと静まり返った部屋の中に俺の声が落ちる
その言葉を聞いてピクリと眉を震わせたユアン王



