「すぐに、お支度を。時間はありません――グレイス」
どこか冷めきった言葉を落としたホリスが、近くにいたグレイスを呼ぶ
駆け寄ってきた彼女は小さく膝を折ってから、私を見て小さく頷いた
「姫様...お早く」
「グレイス」
「姫様の事は、私が命を懸けてお守りいたします」
どこか濡れた様に輝くグレイスの瞳を見て
グッと唇を噛みしめた
暗く伸びる世界が足を掴む
どこまでも沈む底なし沼
愛する祖国を捨てて
愛する者達を捨てて
私はどこへ向かうのだ―――?
絶望の中、重たい空気が首を絞めて
息もできなくなる
そんな時――
「道は他にもあります」
突然そんな声が聞こえる
勢いよく伏せていた目を上げると、扉の前で立つ1人の男が目に入った
愛しいその姿に、胸が締め付けられる



