My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ




「すぐに、お支度を。時間はありません――グレイス」



どこか冷めきった言葉を落としたホリスが、近くにいたグレイスを呼ぶ

駆け寄ってきた彼女は小さく膝を折ってから、私を見て小さく頷いた




「姫様...お早く」

「グレイス」

「姫様の事は、私が命を懸けてお守りいたします」




どこか濡れた様に輝くグレイスの瞳を見て

グッと唇を噛みしめた


暗く伸びる世界が足を掴む

どこまでも沈む底なし沼



愛する祖国を捨てて

愛する者達を捨てて



私はどこへ向かうのだ―――?



絶望の中、重たい空気が首を絞めて

息もできなくなる



そんな時――






「道は他にもあります」




突然そんな声が聞こえる

勢いよく伏せていた目を上げると、扉の前で立つ1人の男が目に入った



愛しいその姿に、胸が締め付けられる