My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ




「もはや、道はないのでは――?」



降り積もる沈黙を打破したのは

こんな時でも美しく透き通るホリスの声



星屑を集めた様な銀の髪が揺れている




「我ら騎士達が時間を稼ぎます。その内に民や姫様はレリーヌの滝の裏から逃げて下さい。あそこを通れば、帰らずの平原に出られます」



周りを取り囲む者達を見渡しながら、淡々とそう言うホリス

まるで、その言葉の意味を分かっていない様に




「――ホリス..何を言って..そんな事できるわけがないだろう」

「姫様。あなたは何者です」




油断すれば震えてしまいそうな唇を噛みしめて、目の前にいるホリスを睨む

しかし、それを跳ね返す様に厳しい声が私を包んだ




「あなた様は、この国の姫君です」

「ならばなおさらだ。民や騎士を犠牲にして、生きらえて何になる」

「あなた様の役目は、この国を守る事です」

「ならばっ!」

「例え、この地で生きられぬとも!! アネモスの一族を滅びさせてはなりませぬっ!!」




声を上げた私に被さる様に、大声を出すホリス

その覇気に、思わず口を噤む