My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



そして語られる

竜族の通ってきた道




「夜の闇に紛れて、突如ガスパルの軍勢が国に押しかけてきた。屈強な外壁も騎士達も、隙を突かれて大軍の前に瞬く間に崩れていった――無理もない、仲間だと思っていた者が裏で手を引いていたのだから」

「…ゼファー」




裏切り者の竜族最後の生き残り

ガスパルの現、国王

今、この美しい国をも滅ぼそうとしている

悪魔の国の頂点




「王家の者も剣を取って戦った。しかし、徐々に追い詰められ、逃げ場を失った」

「――」

「世界が真っ赤に燃え上がり、夜なのにまるで昼の様に明るかった」

「炎…」




その言葉を聞いて、ふと脳裏にある事が思い出される

何故か幼い頃から目を閉じれば思い浮かぶ

炎に囲まれた、世界

瞼の奥に焼き付いたように、今も離れないでいる




「そして、託されたのだ」

「――え?」




託された?



その言葉の意味が分からず、父の言葉の先を待つ

逸る気持ちを押さえながら


すると、ゆっくりと前を向いていた顔を俺の方に向けた父さん

そして、慈しむ様に目を細めた




「お前だ」





父の口から零れた言葉の意味が分からない

魔法にかかった様に固まってしまった俺を見て、ふっと表情を緩めた父

そして、言った―――