そして語られる
竜族の通ってきた道
「夜の闇に紛れて、突如ガスパルの軍勢が国に押しかけてきた。屈強な外壁も騎士達も、隙を突かれて大軍の前に瞬く間に崩れていった――無理もない、仲間だと思っていた者が裏で手を引いていたのだから」
「…ゼファー」
裏切り者の竜族最後の生き残り
ガスパルの現、国王
今、この美しい国をも滅ぼそうとしている
悪魔の国の頂点
「王家の者も剣を取って戦った。しかし、徐々に追い詰められ、逃げ場を失った」
「――」
「世界が真っ赤に燃え上がり、夜なのにまるで昼の様に明るかった」
「炎…」
その言葉を聞いて、ふと脳裏にある事が思い出される
何故か幼い頃から目を閉じれば思い浮かぶ
炎に囲まれた、世界
瞼の奥に焼き付いたように、今も離れないでいる
「そして、託されたのだ」
「――え?」
託された?
その言葉の意味が分からず、父の言葉の先を待つ
逸る気持ちを押さえながら
すると、ゆっくりと前を向いていた顔を俺の方に向けた父さん
そして、慈しむ様に目を細めた
「お前だ」
父の口から零れた言葉の意味が分からない
魔法にかかった様に固まってしまった俺を見て、ふっと表情を緩めた父
そして、言った―――



