My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



「竜族!?」



思いもしなかった名を聞いて、目を見開く

竜族って、あの?




「ヴェントスも、昔は竜族と同盟を結んでいたのだ。一族が滅びるまではな」

「知らなかった…」

「それで、私も度々竜族の国を訪れていた――とても、いい国だった。時の王も、気さくな御方でな、私が出向く度に温かく迎えてくれた」



戦士の国――竜族

一度は訪れてみたかった



そんな国の王と懇意にしていたなんて――



どこか尊敬の眼差しで父を見つめていると

どこか懐かしむ様に、再び話し出した父




「あの日も、たまたま竜族に届け物があってな。あの国を訪れていた―――そして、事件は起こったのだ」

「――それって、もしかして..」




竜族を襲った事件

この世を反転させる程の衝撃的な出来事



それは、1つしかない




「あぁ、そうだ。一族が滅びた時。私はあの国にいた」



まるで殴られたような衝撃が体を襲う

あの、世界を揺るがしたと言われる竜族滅亡の日に、あの国に父さんがいた?




「――壮絶な戦いだった」



そんな俺を横目に映したまま、どこか呟く様に言葉を落とした