「グレイス? どうした、答えよ」




隣にいたホリスも気になったのか、一歩前に出て彼女の顔を覗き込む

すると、瞳を揺らした彼女がもう一度声を落とした





「ゲル様がっ‥お部屋にいらっしゃらないのですっ!」




その言葉を聞いて、意識を飛ばしそうになる



またか。と思って



ホリスも同じ事を思ったのか、目頭に手を当てて、小さく溜息を吐いた




――そう

ここ最近グレイスや俺達を悩ませている事

それは




父の脱走