My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



「そなたの父は、本当に―――」



しかし、そこまで言って今度はホリスが口を噤む

真っ直ぐに俺を見ていた目を途端に伏せた




「――‥いや。何でもない」

「父がどうした?」

「いい。私の勘違いだ」




詰め寄る俺に、目を伏せながらそれ以上口を開かないホリス

自分の頭の中で何かを考えている様子だった



その様子を見て、きっとこれ以上何を言っても答えてくれないと分かり、何も言わずにホリスの姿を見つめる




何故、そんな事を聞く必要があったのだろうか

確かに母の事は知らないが、俺が産まれた事をとても喜んでいたと聞いた



父は、あまり母の事は話さない

幼い頃に母の事を教えて欲しいと、せがんでも

お前を愛していた。としか教えてはくれなかった



まるで触れられたくない様に



その頃は、母の事を思いだすのは辛いからだろうと思っていた

思い出に触れる度に、悲しくなるからだろうと


だから、必然的に母の事は聞かなくなった

どこか寂しそうに話す父の顔も見たくなかったから