「そなたの父は、本当に―――」
しかし、そこまで言って今度はホリスが口を噤む
真っ直ぐに俺を見ていた目を途端に伏せた
「――‥いや。何でもない」
「父がどうした?」
「いい。私の勘違いだ」
詰め寄る俺に、目を伏せながらそれ以上口を開かないホリス
自分の頭の中で何かを考えている様子だった
その様子を見て、きっとこれ以上何を言っても答えてくれないと分かり、何も言わずにホリスの姿を見つめる
何故、そんな事を聞く必要があったのだろうか
確かに母の事は知らないが、俺が産まれた事をとても喜んでいたと聞いた
父は、あまり母の事は話さない
幼い頃に母の事を教えて欲しいと、せがんでも
お前を愛していた。としか教えてはくれなかった
まるで触れられたくない様に
その頃は、母の事を思いだすのは辛いからだろうと思っていた
思い出に触れる度に、悲しくなるからだろうと
だから、必然的に母の事は聞かなくなった
どこか寂しそうに話す父の顔も見たくなかったから



