「さっきの話だけど、
雪乃は強いから、大丈夫だと思う。」

帰り道、彩音が唐突に言い出した。

「それは、そうだと思うけど…」

「雪乃は基本、人気者だから、
悪口を言う人が目立つだけで、
割合としては少ないでしょ?」

たしかに。

あれからよく観察してみたけど、
同学年で雪乃の悪口を言っているのは
相澤さんの周辺だけだった。

悪口を言っていた先輩は、
テニス部の先輩。

ちなみに相澤さんもテニス部。

つまり、そういうことだ。

「谷中先生のファンは他にもいるけど
別にみんなが雪乃を
いじめてるわけじゃない。」

私がそう言うと、

「雪乃をいじめてるのは、
相澤さんを中心としたテニス部員
ってこと?」

続きを彩音が言ってくれた。

おそらく、彩音の言うとおり。

「大好きな谷中先生が、
テニス部員である自分たちを無視して
雪乃のテニスを褒めたから、
むかついたんでしょ。」

本当に腹が立つ。

「……女って面倒な生き物だね。」

彩音が言う。

「どうせ先生なんて、
私たちみたいな生徒を、
女としてみることがないだろうに。」

「…………うん。
あーーーなんか腹が立ってきた!
たきのり、明日の放課後、暇?」

「へ?うん。空いてるけど?」

「いい考えがある。」