雪乃が何も言わない以上、
私からもその話題は触れないでいた。

私にできる事といったら、
他愛もない話をして、
雪乃の気を紛らわしてあげる事くらいだから。

こういう噂は収まるのを待つしかない。

その後何もなければ、収まるから。

でも…


「皆、土曜の球技大会はお疲れ!
終わったからって燃え尽き症候群で、
授業中寝るなよ?
いっとくけど、中間テストまでそんなに
時間、ないからな?」


火曜日、谷中先生の、
日本史の授業でのことだった。


「でも球技大会、おまえら結構凄かったな。
特に高橋、テニス総合優勝だろ?
俺、感動しちゃったよ。
高1が優勝するなんて、
この学校に来てはじめてだからさ。」

「ありがとうございます!」


雪乃のテニス優勝について触れた先生は
他にもいた。

こんなやりとりも何度か聞いたはずなのに、


なんだか嫌な予感がした。