「中野の手術?」

「うん…」


兄貴が車で学校まで迎えにきて、
近くの定食屋で話す。

そういえば昼も食ってなかったし、
ちょっと遅めの昼飯になった。


「珍しいじゃん?
兄貴が自信、ないなんて…」

「そうかな?いつだって手術は緊張するよ?
手術に絶対はないから。」

「まあ、そうだろうけど…
でも初めてじゃないんだろ?
中野と同じ病気の奴の手術。」

「うん。…でも、怖いんだ。」

「怖い?やっぱり、成功率が高くないから?」

「それもあるけど…それよりも…」

「それよりも?」


「彩音さんが、
僕の前から、いなくなるのが、怖い…!」


「兄貴…」


「ずっと、ただの患者だって、
思い込もうとしたけどダメで…
彩音さんへの気持ちが大きくなるたびに、
この人が、
いなくなってしまったらどうしようって。
僕が…僕が救えなかったら、
どうしようって!!!」

「………」

「手術するのが、怖いんだ。
だけど、彩音さんは…僕を信じてるって…
どうしよう…」

「しっかりしろよ!兄貴!
信じられてるんだろ!!
だったら兄貴しかいないんだよ!!
中野を救えるのは!兄貴しかいない!!」

「守…」

「大丈夫!俺もいる。
俺たち兄弟は、最強なんだぜ?
2人で何かをやって、
失敗したことは一度もないだろ?
まあ、今回俺は何もできないけど…」

「ありがとう、守。そうだったね。
何もできなくなんかないよ?
僕がこうして迷ったときに、
いつでも守はそうやって、
まっすぐな言葉を僕にかけてくれるから。
僕たち2人なら、大丈夫、なんだね。」