私の役はエポニーヌ。

青年マリウスに恋する女の子。
だけど、マリウスはヒロインのコゼットと
恋に落ちてしまう。

エポニーヌが
どんなにマリウスのことを想っていても、
その想いはマリウスには伝わらない。

オン・マイ・オウンはそんな、
エポニーヌの気持ちを歌った曲だ。


…正直、前に歌ったとき、
エポニーヌはバカじゃないかと思っていた。

どんなに頑張っても
自分を見てくれない男なんて、
さっさと忘れるべきだ。
諦めるべきだ。

その方が、幸せになれるに決まっているのに。
と思っていた。


だけど…




私は舞台袖から舞台へ出る。



ふと、客席を見ると…



あ、本当に来たんだ?


先生の兄であり彩音の主治医である、
剛先生の姿が見えた。


来れば?って言ったのは私だけどさ、
律儀な人だなまったく。



なんて思って、
無意識にその隣も見てしまった…



嘘……どうして?



絶対に来るわけないって思ってた。



先生…



先生が、見ている…



エポニーヌはまるで今の私ではないか…
さっさと諦めるべきなのに、
わかっているけれど。
ついつい想ってしまう。期待してしまう。


先生…

先生…