私が高校で合唱部に入らなかった理由は、
音感がないっていうのもそうだし、
一人暮らしをはじめて、時間がないってのも
あったけど、

もうひとつ、大きな理由がある。

「凛はいまだにあのこと気にしてるの?」

雪乃がいう。

「あれは、たきのり悪くねえし。」

彩音もいう。

「悪いとか悪くないとかの
問題ではなくてだな…」


そう。
私は部員を一人、辞めさせてしまったのだ。

簡単にいうと、
あれは去年の年末。

父親の再婚とか、
一人暮らしをするだのしないだので
色々忙しかった頃。

私は年末の学内コンサートで、
ソロの曲をやらせてもらえることになった。

が、音感ない上に忙しかった私は、
全然歌えなくて、
それでもなんとか合間を縫って
彩音と猛特訓することになる。

そんな時に、
一学年下の後輩に、喧嘩を売られた。

「先輩みたいな音痴に
どうしてソロ曲があるんですか?」と。