手を繋いで駅から出たものの、
滝野はあれから、
少しうつむいて、無言で歩いている。

…そんなに具合が悪いのか?

心配になってしまう。

「大丈夫か?」

そう聞いたって、
どうせ大丈夫って答えるに決まってるけど、
それでも思わず、聞いてしまう。

「………い、です。」

「…え?」

予想外にも、消え入る声で何かを言った。

「寒い…です…」

もう10月とは言え、今日はそこそこ温かい。
まだ日も高いし。決して寒くはない。

それでいて、寒いということは、
まだまだ熱が上がっている証拠である。

「ちょっと不恰好になるけど、
これでも着てろ。」

俺は着ているジャケットを脱いで、
滝野の肩に被せた。

「え?いや、大丈夫ですよ。
それだと先生が寒くなっちゃいますし。」

こんなときに人の心配するなよ。

「俺は別に寒くねえから。
今日、わりとあったかいし。」

「ありがとう…ございます。」

滝野は無理して笑う。
本当に…こいつは。