「行かなきゃいけないとこって、
どこなの?」

勇の車に乗りながら、
俺は窓から滝野の姿を必死に探す。
今ならまだ、追いつくはずなんだけど。

「おい、無視かよ、こら!」

あいつを一人で帰すと聞いてから、
まだ15分。

学校から駅までは歩いて10分くらい
だけど、
あいつの足だと15分はかかるだろう。
まだ、電車には乗ってないはずだ。

「え?なんか言った?」

「はあ…今からどこいくわけ?」

「俺が、
そばにいてやりたい奴のところ。
かな?」

「ああ?なんだそのキザな台詞は!
女のとこか!
女のとこに行くために、
仕事放り投げたのか!?」

「へへへ!まあな。」

「"まあな"じゃねえよ!ったく!
彼女はいないって言ってたくせに。
俺の車はお前のデートのための
送迎車ではありません!」

「悪かったって。
この借りは今度、絶対返すから。」

「今度、
駅前のいつもの居酒屋で飲み放題な。」

「あいよ。」