そうだよ。

俺は、
何を勘違いしそうになってるんだ。

生徒をそんな目で見るわけない。
滝野はただの生徒だろ?

ただの生徒…

≪先生っ!≫

思い出すのは滝野の笑顔。
たまにぼーっとしてる滝野。
半泣きで悩んでる滝野。
安心できる滝野の声。

ただの生徒…

「俺は帰るけど、
守、せいぜい頑張れよ!」

そう言って、
勇が職員室から出ようとする。

俺はバカだな。
こんなに悩むなんて、
俺らしくない。

「勇、待って。
俺も帰るから、
駅まで車に乗せてくれねえ?」

俺ほど単純な人間はいないだろ?

「は!?お前、採点は?」
「ちょっと、谷中先生!?」

勇とお局の疑問の声が降りかかる。

「採点は月曜には絶対に終わらせます。
今はどうしても、
行かなきゃいけないとこがあるので。」

こんなに気になるのに、
何がただの一生徒だ。

これが何の感情なのかはわからない。

だけど今、
滝野のそばにいてやりたいって
思う気持ちは確かなものなんだから。

俺はそんな、
自分の気持ちに従うしか、ないだろう?