先生の「特別」にしてくださいっ!

「仕方ないわね。
気を付けて帰らせましょう。」

いやいやいや。
待ってくれよ。
だからあいつは…

「わかりました。
お友達が教室から
鞄を持ってきてくれたみたいなので、
そのまま帰らせます。」

俺がどんなに焦ったところで、
まさか、
あいつが一人暮らしだなんて、
今ここで言えないし。

俺が下の階に住んでるから知ってます
なんて、告白するわけにもいかない。

俺はここで、
何も知らないふりをして、
黙っているしかないんだ。

それしか、
できないんだ。

だって俺は、
滝野の担任というわけでもないし、
ここではただの
日本史教師だから。

本来、
滝野の住所だって、
知るわけもない一教師だから。