先生の「特別」にしてくださいっ！

「ご両親は仕事で、
今、家にいないらしいんですよ。」

「そうなの？困ったわね。」

「兄弟もいないみたいですし、
このくらいの熱なら一人で帰れる
って本人は言ってるんですけどね。」

「ご両親は仕事から
戻ってこられないのかしら。」

「娘が風邪ひいたからって、
すぐに帰れるほど、
楽な仕事はしてないと思う。
って滝野さんは言っていました。」

ふと隣を見ると、
滝野のクラスの担任の林先生と
養護教諭が話している。

風邪…熱……？
滝野が？

「ご両親もお忙しいのね。」

ご両親は忙しいどころか、
父親は今、海外にいるって言ってたぞ？

義母は…日本にいるらしいけど、
あいつの性格的に
頼ることは多分ないだろう。

「夕方にはご両親、
お帰りになるみたいだから、
帰らせてもいいですよね？」

は？

え？
ちょっと待って？
夕方には帰ってくる？
誰が？

だってあいつ、一人暮らしだぞ？

どんなに待ったって、
誰も帰ってくるはずがない。
あいつはずっと一人なんだから。