「もしかして、
高校生ですか?」

ギクっ!

「あ、いえ。
よく間違われるんですけど、
大学生です。」

嘘が上手いなあ…私。
我ながら感心する。

「そうでしたか。失礼しました。
実は俺、高校で教師やってるんですよ。」

知ってる。
よく存じております。

「そうなんですかー」

だが、知らないふり。

「だから同じ様な年頃かなあ、と。」

なかなか鋭いな。

「ふふ…
私もまだ一年で、
去年までは高校生だったので、
ほぼ高校生みたいなものですけどね。」

これでどうだ。

「そうだったんですか。
まあでも、女性の一人暮らしは
何かと大変でしょう。
困ったことがあったらいつでも
呼んでくださいね。」

おお、優しいなあ。
それにいい笑顔だ。
谷中ショックを引き起こすだけのことはある。

「ありがとうございます。」

絶対に
お世話になるつもりはないけど。

「では、これで。」

そういって、下の階の住人は
爽やかに出て行った。