「あ?学校だよりのマル秘質問コーナー?
そんなんでいいのか?」

すっかり風邪も治って、
滝野にどんなお礼が良いかを聞いたら、

学校だよりのマル秘質問コーナーに、
答えてほしいと言われた。

「先生方は皆、秘密主義らしくて、
誰もOKしてくれないんです。
一緒にやってる雪乃も困ってて…
だったら、
ここは私が雪乃の役に立ちたいなあ…と。」

「で、俺に白羽の矢が立ったのね。」

「私、先生以外、
あんまり教師と話したことないので。
…ダメ、ですか?」

そういえば、
こいつが教師と親しく話してる姿、
確かに見たことない。

「ダメじゃねえけど、
別にそれはお礼とかじゃなくて、
普通にやってやるよ。
他に何かねえの?欲しいもんとか。」

「えー悪いですし。」

「何でも言えって。」

「じゃあ、六本木の高級マンション。」

「却下。」

「何でもって言ったくせに…」

「高校一年生にはまだ早すぎます!」

「じゃあ、駅前の洋菓子屋のプリンで
お願いします。生クリーム増量のやつで。」

「…お前も普通に女子高生なんだな。」

「は?当たり前です。
人をなんだと思ってたんですか?」

「いやーなんか、もっと
悟りをひらいてる尼さんかなんかかと…」

「そのプリン一年分、お願いします。」

「ああ!悪かった!悪かったって!」


滝野に叩かれたあの日から、
滝野との距離がグッと近寄った気がする。

今ではこんな風に冗談を言って笑いあえる。

これまであまり見られなかった
滝野の笑顔をよく見られるようになって、
やっぱり俺は、不謹慎ながら、
風邪をひいてよかったなんて、
心のどこかで思っているのであった。