「本当ですか?」

会長の声が耳に入る。

「本当です」

そう言って、あたしは伏せていた目をあげた。

会長の顔がいつものデレ甘い笑みになる。

「お待ちしています」

会長は丁寧に会釈すると、あたしの前から去った。

会長がいなくなったことを確認すると、あたしもその場から離れた。

「非常階段…か」

離れる前に、さっきまで会長と一緒にいた場所を確かめた。

あたしたちは非常階段に2人きりでいたようだ。

「早く戻ろう」

みんなにはトイレに行くって言って出て行った訳だし、いろいろと心配していることだろう。

早足であたしは部屋に戻った。