おとななこども

だけど、期待している自分に気づいた。

このグロスを塗ったら、会長がまたあたしにキスしてくれるんじゃないかと思っている自分がいる。

「いや、待て」

あたしは首を横に振った。

おかしい。

おかしいから、あたし。

何で会長からのキスを期待しなきゃいけないんだ?

でも…。

あたしは手の中のグロスを見つめた。

「ま…真里に借りたんだから…」

真里に借りた以上は、絶対に使わないと。

そう思ってあたしは、唇に桃の香りがするグロスを塗った。