おとななこども

「映画館を選んだってことは、何か見たい映画があったんですか?」

そう聞いてきた会長に、
「えっ…ああ、はい…」

あたしはうなずいた。

あたしが…と言うよりも、真里が見たがっていた映画があったからだ。

「やっぱ、最初のデートは映画館だよねー♪」

昨日の夜、少女マンガのコミックを片手に真里は言った。

「何で?」

冷めた視線を向けたあたしに、
「恋愛もいいけど、ホラーも捨てがたいんだよねー。

怖いシーンがあったら相手に抱きついて、密着することができるじゃん♪」

真里の頭は乙女妄想へ。

「絶ッ対ありえないから!」

乙女妄想中の真里に、あたしはバシッと一言を浴びせた。