そして、唇には桃の香りが漂っている。

そう、文化祭で委員長にメイクしてもらった時と同じ香りだ。

「じゃーん!」

「…何よ、それ」

真里があたしに見せたものは、ピンク色のスティックだった。

スティックには「Peach」と書いてある。

「これね、今流行ってるんだー♪」

「えっ、ちょっ…」

あたしの止める声を聞かないと言うように真里はあたしの唇にそれを塗った。

スティックから桃の香り。

…嫌味か、おい。

「よし、できた♪」

真里は手鏡をあたしに見せた。

あたしの唇がつやつやと光っていた。