同級生でもあり、幼稚園の風紀委員長の絶対的娘であるマナが話に入り込んで来た。梨花は、この子のことがあまり好きではない。親の権力の下で悠々自適で何不自由ない暮らしをし、甘えた声を出せば、誰かが助けてくれると思っている。
「セックスの話しだよ」
梨花は言った。
マナは目を見開く。首が左右に揺れた。先生を見て、梨花を見た。もう一度、より深く、もう一度、念入りに。おそらくマナにとって信じられない事柄であったのであろう。
「マナちゃん、そんな話しはしてませんよ。林檎についてのお話をしていたんです」
先生は取り繕う。それは苦し紛れであり、どこか嘘めいて聞こえていることは明白だった。
「えっ」と梨花はわざとらしく驚き、「先生の彼氏の唾液が林檎味なのよ、セックスって最高って言ってたじゃん。先生、先生」
同じ単語を二度続けることは、梨花は好まない。だけど、この場では効果的だ。
「先生・・・・・・」
とショックがでかいのかマナは次の言葉が続かなかった。
「でも、マナちゃんも罪ね」
梨花は林檎を果汁を飛ばしながら齧る。徐々に手がべとつき始めた。
不快。
「罪?」
とマナ。
うん、と梨花。「だって、セックスの話をしてる、って言ったら、だんまり決め込んで、さらには、か弱き乙女を演じるなんて、さ。セックスの偉大さを知ってるからこそ、黙り、か弱き乙女を演じたんじゃない?」
「梨花ちゃん!」
と先生が物凄い剣幕で梨花に詰め寄る。
「そんなことないもん。セックス」
とマナは言葉を発して、あっ、と口元を手で押さえた。
「親が風紀委員長をしている娘が、セックス、って風紀が乱れる、乱れる」
バチン、と梨花の右頬に一瞬の痛みと炭酸を飲んだときのような爽快さが炸裂した。そう、ビンタをされたのだ。
誰に?
「好い加減にしなさい」
そう、先生に。
さて、こういうときって子供は便利。どう対処し、未来をどう動かすかを感覚的にわかっている。
泣けばいいのだ。それも激しく、大袈裟に、権力者を呼び寄せるように。
梨花は泣き真似がうまかった。将来は女優になるのも一つの手だ。いずれ汚らしい大人になるのも憚れるが、今という時を汚い心で過ごしているのだから仕方がない。運命を受け入れ、今を受け入れることにしよう。
「先生、暴力は駄目ですよ」
「セックスの話しだよ」
梨花は言った。
マナは目を見開く。首が左右に揺れた。先生を見て、梨花を見た。もう一度、より深く、もう一度、念入りに。おそらくマナにとって信じられない事柄であったのであろう。
「マナちゃん、そんな話しはしてませんよ。林檎についてのお話をしていたんです」
先生は取り繕う。それは苦し紛れであり、どこか嘘めいて聞こえていることは明白だった。
「えっ」と梨花はわざとらしく驚き、「先生の彼氏の唾液が林檎味なのよ、セックスって最高って言ってたじゃん。先生、先生」
同じ単語を二度続けることは、梨花は好まない。だけど、この場では効果的だ。
「先生・・・・・・」
とショックがでかいのかマナは次の言葉が続かなかった。
「でも、マナちゃんも罪ね」
梨花は林檎を果汁を飛ばしながら齧る。徐々に手がべとつき始めた。
不快。
「罪?」
とマナ。
うん、と梨花。「だって、セックスの話をしてる、って言ったら、だんまり決め込んで、さらには、か弱き乙女を演じるなんて、さ。セックスの偉大さを知ってるからこそ、黙り、か弱き乙女を演じたんじゃない?」
「梨花ちゃん!」
と先生が物凄い剣幕で梨花に詰め寄る。
「そんなことないもん。セックス」
とマナは言葉を発して、あっ、と口元を手で押さえた。
「親が風紀委員長をしている娘が、セックス、って風紀が乱れる、乱れる」
バチン、と梨花の右頬に一瞬の痛みと炭酸を飲んだときのような爽快さが炸裂した。そう、ビンタをされたのだ。
誰に?
「好い加減にしなさい」
そう、先生に。
さて、こういうときって子供は便利。どう対処し、未来をどう動かすかを感覚的にわかっている。
泣けばいいのだ。それも激しく、大袈裟に、権力者を呼び寄せるように。
梨花は泣き真似がうまかった。将来は女優になるのも一つの手だ。いずれ汚らしい大人になるのも憚れるが、今という時を汚い心で過ごしているのだから仕方がない。運命を受け入れ、今を受け入れることにしよう。
「先生、暴力は駄目ですよ」


