「一号車だ。四号車と一号車を間違える意味がわからない」
「おっしゃる通りです」
 と鳥男は項垂れた。
 その後、鳥男は左頬を押さえながら、一号車へ向けて歩みを進めた。彼の後ろ姿を眺めながら絹枝が、「私に若いエキスと温もりを」とエステコマシャールの謳い文句のようなことを小声で囁いていた。気づけば、老夫婦は自席に戻り、あたりめを貪っていた。だからか四号車には何とも異様な臭いが充満していた。