あの時。

俺はようやく、思い知ったんだ。


マコトは決して、俺だけのものにはならない。


たとえば。

よくある、たとえ話だ。


あの少女と、俺が崖から落ちそうになっていたら、マコトはどっちを助けるか。


多分マコトは、無理でも両方に手を差し伸べる。

一緒に落ちるとしても、どちらかなんて、選べない。


俺を選んでほしいわけじゃない。

むしろ、少女を選んで、俺を見捨ててもらった方が、ましだ。


いざというとき、互いを犠牲にできるだけの、深い関係が作れるなら。


だけど。


マコトにとって、どこまでも、他人は平等な距離で。

いくら俺が兄でも、どんなにマコトを好きでも、その距離は縮められない。


マコトは、俺を好きでいてくれる。

それは、わかっている。


だけどそれは、マコトが俺を選んでくれるといことじゃない。