「ボク、おじさんを憎んだことなんて、ないです」


だって、ずっと知らなかったし。

記憶だって、たったひとつしかないし。

何より、ボクには父さんがいるから。


おじさんが、驚いたように、ボクを見る。


「恨んで…ないのか?」


ボクは、頷いた。


「俺は、君と君の母親を捨てた。君にも、ひどいことを言った。それでも、憎くないのか?」


あ。
ホント、だ。


おじさんに言われて、気が付いた。

ボク、おじさんのこと、憎いなんて思い付きもしなかった。

「だって、おじさんは、陸さんが大切だから、言ったんでしょう?ボクがおじさんの立場だったら、やっぱり、おんなじこと、思ったと思う」


自分の大切な人の前に、自分を恨んでいるかもしれない人間がいたら。
大切な人を守らなくちゃ、って思っても、当然だと思う。