私は彼とベンチに腰を下ろした。
彼は、そうだ、と呟いて私の方に向いた。

「お名前、伺ってもよろしいですか?」

「へ…!?」


まさか名前を聞かれると思ってなかった私は質問にあたふたしてしまった。


名字?名前?フルネーム?
でも、れいちゃんが男の人に話しかけられてたときは名前だけ答えてたよね?あれ、じゃあ名前だけの方がいいのかな?


男の人とあんまり免疫のない私は頭の中でどう答えるかフル回転させていたら、


「あ、すいません…。まず自分から名乗れよって話ですよね…こむら やすちかっていいます。答えたくなかったら大丈夫ですよ。」

「あ、いえ!フルネームの方がいいのか名前だけがいいのかとかそんなことで悩んでただけです!こむらさんが先に答えてくれたので助かります。たかなし こなみです!」

「たかなし…さん?」

「こなみでいいですよ。こむらさんの方が多分年上ですし」

「うーん…じゃあこなちゃんで」

「初めてです、その呼ばれ方。ふふっ」

「俺もやすちかでいいですよ?」

「こむらさんって響きが気に入ったのでこむらさんがいいです」


こむらさんがふふっ笑って嬉しそうに

「俺も始めて。響きが気に入ったって言ってもらうの」