7月の気だるい暑さの中。
あたしはうちわで扇ぎながら、
チューペットを食べていた。

「こんにちは」

おばあさんが紙袋を片手に店に
入ってきた。

「和助さんに用があって…。」

弱々しい声で喋っている。

あぁ、そっか。
まだ、おじいちゃんが死んだ事
広まってないんだ。

あたしはそう思いながらおばあさんに
事情を説明した。

その途端、おばあさんはシュンとした。

このままでは可哀想だと思ったので

おばあさんを家にあげてあげた。
嬉しそうにしていた。

仏壇の前で手を合わせて
しみじみしていた。

紙袋から最中を取り出し、お供えした。
最初からお供えするために持ってきたのでは
と、思ったけどそこはまぁ良しとしよう。

少し、お話をした。
「おばあさんは、ここで時計買った事
 ありますか?」

「えぇ。ありますよ。とてもオシャレな
 懐中時計を買いました。」
ジャラッ
綺麗な鎖がついている時計を袂から出した。

とても思い出深そうに眺めている。

「この時計、もう壊れていて
 動かないのよね…。はぁっ。」

直せるものなら直したい。
けれど、下手な事をして壊したら
いやだったので手を付けなかった。

すると、おばあさんの方から
「直してくれませんか?」と
声をかけられた。
あたしは、心底、「イヤ、やめとけ」と思った