一旦深呼吸を繰り返し、体内の熱と冷たい空気を折り合わせる。

そうして少しだけ落ち着いた状態で、言った。


「さっきから言ってるでしょっ、実亜だってば。鏡月実亜! お前じゃないからねっ」


聞いたのはカイトのハズなのに、フンッ、と鼻であしらったかと思えば、再び前を向いて歩き出した。


……なんなんだコイツは。


そう思いながらもその背中を追って、私も歩き出す。

さっきと同じように彼の後を追っているというのに、明らかにさっきとは違う。

それは、カイトの歩くスピードだ。

どうやらさっきまではスピードを落として歩いてくれていたようだ。

時間が無いから、と急かしていたにも関わらず、息があがる事も小走りすることも無く私は彼の背中に追い付いていた。

それに比べて今はカイトに追いつくため、私は息を弾ませ小走りをしてる。