「じゃあ、あれは……夢じゃなかったんだ」


そう思った瞬間、ベッドから飛び退き、部屋を飛び出した。

髪は跳ねて、服はいつもの上下スウェット。そんな状態で玄関でサンダルを引っ掛けて、駆け出した。

向かう先は、私の家のすぐそばにある海斗の家だ。


朝は冷たい空気がひやりと肌を刺す。

鼻から吸った空気は私の気管と肺を凍らせる。

でも、心の中は焼けるように熱い。


はぁはぁと息を荒げて、海斗の家の前に付いた時、ピタリと足が止まった。


ちょうど、玄関から出てくる男の子。

そいつは私が向かう先の家から出てきた。頭にキャップを被り、ブルーのパーカーを羽織った風体。



「……海斗」


あっ、声が裏返った。

寝起きのせいと、走ったせいだ。

けど、そんな事はどうでもよかった。


海斗はビックリした顔で、一瞬固まってたけどすぐに私だと気がついて、眉を潜めた。



「実亜……? お前、こんな朝早くから何やってんだ」



……ああ、海斗だ。

彼は私の良く知る、幼なじみの海斗。

ほっとして、また涙が出そうになった。


声を聞いただけで泣くなんて病気じゃないか。そんな事になればもっと海斗は変な顔をするに決まってる。