開け放たれた扉の向こうには、さっきまでいた闇の世界が広がってる。

あんなにあった様々な扉はもう、消えていた。


ただ昏々と広がる闇。

けれどそれはもう怖いとも、寂しいとも思わない。

むしろ暖かく、美しいとすら思えてくる。


それはなんでかなぁ……?



ゆっくりと立ち上がり、カイトは私の手を引いて歩き出す。

白い扉をくぐり抜けた瞬間、それはふわっと蒸発した。


「あれ……?」


思わずあげた声に、カイトが不思議そうな様子でどうした、って聞き返す。


「ミアがいない。さっきまでここにミアがいたの」

「ミア様が……?」

「そうだよ。私をずっと導いてくれてたんだ……」


なのに、辺りを見渡してもどこにもいない。

暗い闇の中、白い霧の姿をした、もう一人の私。

見失ったりはしないはずなのに。



「こんなところにいるわけがないだろう」

「でも本当にいたんだから」


私はミアと話をしたもの。

あれはミアだって感じたもの。

ここにいるのが私の知ってるカイトだと思うのと同じように。



「とにかく戻るぞ。本当にミア様だったのであれば、元に戻れば現れてくださるはずだ」

「……うん、そう、だね……」


まだ納得がいき切らない私のそばで、腰に差していた剣を抜き、時空を切り裂いた。