「カイ……」

『待ってたわ……』



私の声に誰かの言葉が重なった。


けれど声が聞こえたというよりも、これはワンドの時と同じだ。

脳に微弱な振動が与えられ、その脳内で聞こえる声。


「あなた、誰? ずっと私に話しかけてたよね」

『……そう、ずっと話しかけてた。あなたがこの声を聞き取ってくれるようになる前……あなたがこの国にやって来た時から、ずっと』

「そんなに前から?」


今までで一番クリアに聞こえる。

チューニングが合わず、途切れ途切れのノイズ混じりだった声は、やっとちゃんと私に届いた。


『ソーサリーに来た時から、気づいてた……あなたなら助けてくれるって信じて』

「助ける? 私が、誰を? あなたを?」

『そう……あなたならきっと助けてくれると信じてる……私の事も、カイトの事も……』


ああ、きっとそうだ。

ずっと胸の中に引っかかってた。

なんとなくだけどそうじゃないかって思ってた。

可能性としては決してゼロではないと。

ゆっくりと、口の形を確かめるように、言葉を吐き出してゆく。


「あなたは、もしかして……」

『私は……』