本当にここに宮殿の入り口があるのだろうか。
もし違っていたら私達は袋のネズミ同然だ。
今や階段下にはどれほどのサイ達がいるのかすらわからない。
「どこ? 入り口なんてないじゃない! どこよっ!」
焦りが込み上げて、口の中がやたらカラカラだ。
乾いた唇が前歯とくっつく。
上手くろれつが回らない。
気持ちだけが空回り、体中から冷たい汗が溢れ出す。
誰か、お願い助けて!
私はこんなところで立ち止まってる暇はないんだから!
ねぇ、お願い。
ほんとにねぇ……開きなさいよ!
焦りはいつしか苛立ちに変わっていた。
気がつけば壁をドンドンと叩いていた。
初めは平手、そのうち拳を握りしめ、天井を壊すつもりで力一杯殴りつけた。
「いい加減にしろっ! 開かないとぶっこわしてやるわよ!!」
そう叫びながら殴りつけた瞬間、
ーーポォォォン……。
どこかで水が滴るような音が鳴った。
それは大きく、澄んだ音。
その音が消えた瞬間、ゆっくりと光が頭上から差し込む。
初めは一筋、それが徐々に広がり、私の頭上では別の景色が広がった。