「ここで何をしている」
突然背後から声がした。
明らかにノアとは違う声。
ほんのり掠れた、妙に心地の良い声。
けれどその声色は明らかに私を威嚇していた。
「あ、あの〜」
振り向こうとゆっくり首を捻った瞬間、
「動くな! 問いに答えろ」
「ひっ!」
目の端で光り輝くものが見えた。
それが私の首に触れる。
それは先が尖っていて、私の皮膚を甘く刺す。
血は流れていない。
けれど、少しでも動こうものならそれは容赦なく私の首を串刺すだろう。
脅しではない……背後からの殺気がそう物語っている。
「お前は何者だ。何の用があってここをうろついている」
「私は……」
言葉が詰まる。
何者か……そう問われると、私はなんて答えたらいいのか分からなかったから。
……別の次元の、こことは全く違う異世界からやって来ました?
それとも、こちらの世界にいるはずの自分の分身を探しに来ました……?
そんな言葉を、一体誰が信じるというのか。