「実亜、急いで!」
私は震える手でワンドの欠片を握り締める。
ここで立ち止まってはいけない。
立ち止まったら何もかもが本当になってしまう。
カイトが死んだ事。
私があっちの世界で死んだ事。
そして、消えてしまう……カイトへの想いも。
「……うん、大丈夫」
再び階段を駆け上る。
今度は止まらない。
振り返らない。
階段を上りきり、私は辺りを見渡した。
階段を上った先まではアルフレッドの杖の灯りは届かない。
暗い闇。薄汚く、空気も淀んだ闇の中。
私は恐れず手を伸ばし、辺りを探る。
「アルフレッド! どうしたらいい? ここには何もないわ!」
どこ?
宮殿への入り口はどこにあるの?
「実亜、上です!」
下から聞こえるアルフレッドの声。
その言葉にはっとし、上を見上げた。
階段を上がったおかげで天井は低い。
私が手を伸ばしても簡単に届き、むしろ少し屈まなければ立てない高さだ。
その天井を両手で探る。
平坦な天井にどこにも違和感は感じられない。