たとえ、自分の命がかかってるとは言っても、ね。

けど、だからといって投げ出すほど私は冷たい人間じゃない。

面倒だって思ったけど、思うのは自由じゃない?

実際死ぬのはいやだもん。

だから私はそんな軽い判断でここに来た訳じゃない。


でもそれほど時の番人って役職を推すのなら、ノアだけでもなんとか出来たんじゃないかって思ってるけど……。

ただ、口にはしないけどね。


「だいたい、それが出来れば僕だって苦労はしないよ。けど、数ある次元で同時に二つも歪みが現れたんだよ。しかもそれは時間や場所をピンポイントに指してた訳じゃないんだ。ずっと違和感みたいなのがあったけど、それが何かわからなかったんだもん」

「じゃあ、その違和感ってどんな?」

「僕の耳の付け根がすごくムズムズしてたんだよ」


そう言って折曲がった耳を手で押さえ、金髪の隙間から耳の付け根を見せてきた。


「……それって、次元の歪みと関係あるの?」

「だって今までこんな事はなかったもん」



……なんて。

なんて当てにならない話だ。


真剣に聞いていた私が馬鹿みたいじゃないか。