「カイト……?」
声は響きもしなければ、辺りに広がる様子もない。
「せっかく見つけたと思ったのに、また消えてしまったの?」
自分の声は聞こえるのに、それがこの果ての見えない空間に響いているのかどうかとはまた別問題のようだ。
なぜだかそれのことは理解できた。
これはきっと一種の真空状態に近いのかもしれないってそう思った。
けれどここは真空ではない。息は出来るし、それに自分の声は聞こえるのだから。
真空であれば空気を震わせることなど出来ない。
それだったなら自分の声だって聞き取る事は出来ないはずだ。
(ねぇ、ここはどこなの?)
心の中でそう呟いた。
それは自分に対する問いではなく、右手に握り締めている杖に対して。
しかし杖ですら応答しない。
(ねぇ、ワンドってば)
それでも杖は答えない。
すると突然、一気に押し寄せてくるのは、孤独。
この世界に来て初めてだと思えるほどの孤独感。
「ねぇカイト、どこにいったのよ……ねぇ意地悪しないで答えてよ、ワンド」