「これから起こる事はおねぇちゃんにとって信じられない事ばかりかもしれない。もしかしたら辛い事があるかもしれない。僕はおねぇちゃんを救う為に来たって言ったけど、頑張るのはおねぇちゃんなんだ。僕はただ、道を示すだけ。

……それでも頑張れる?」


真剣な眼差しでそう言う少年。

吸い込まれそうなくらい澄み切った瞳を真っすぐに見つめ、私は頷いた。


今、この状況以上に信じられない事や辛い事なんて……あるものか。


「私は、どうすればいいの?」


掴んでいたノアの耳を離し、涙を拭ってはっきりと言葉にする。

しっかりと前を見据えて。

するとノアは、再び顔を緩めて微笑んだ。


「さっき言った、もうひとつ歪みが発生した次元へ行こう。きっと何か原因が見つかるはずだよ」


そう言った瞬間、ジャケットの内側に入れていた懐中時計を取り出し、見やる。

金色に輝く時計はノアの小さな手と同じサイズだ。


「別の次元って……どうやって行くの?」

「それなら大丈夫。言ったでしょ? 僕は時の番人なんだって。次元は自由自在に行けるんだよ」