こんなもの、さっきまであったっけ……?


そう思うが、それは確かに存在している。

ひっそりと、闇の中に溶け込みながら。

けれど決してその存在を見失うことはない影を、この闇の中でさえ浮き上がらせていた。


ゆっくりと、恐る恐る扉に近づく。

それは何枚ものボロボロの板を、錆びた鉄の棒で繋ぎ合わせただけの扉。

ドアノブも付いておらず、代わりに細い錆びた鉄の棒が乱雑にもコの字型に扉に刺さって、取っ手の役目を果たしている。

風化された扉の前に立ち、もう一度だけ辺りを見渡した。

けれど他に扉も無ければ、何も無い。

ゴクリと喉を鳴らして乾いた口、乾いた喉を潤わせ、取っ手を掴む。

右手に掴んでいる杖をぎゅっと強く握り締めて、そして扉を開けた。

すると、引き開けた扉の先には……小屋?


目の前に広がるのは、薄汚いボロボロの小屋。

壁や天井を形作るのは、扉と同じく薄く古びれた板。

そんな部屋の中でほんのり灯る光を頼りに、私は視線を向けた。