「……イフリートを呼び出すとは……。やはりあなたは侮れない人だ」


男の声に焦りがみえる。


「しかしやっと本気になられたのですね。では、こちらも本気でいかせてもらいますよ。行け、かまいたち!」


かけ声に合わせて風がイフリート目掛けて吹き荒れる。

影を破り現れた魔人の腕を、かまいたちは容赦なく斬りつける。

影から体がまだ出きっていないせいか、動きが鈍いようにも感じ、私は固唾をのんで見守っていた。

気がつけば周りに吹いていた風は、私の体を解放していた。

全てはイフリートへ向けて放たれているせいだろう。

落下を始めた私は思わずそばに浮いていた杖を掴んだ。

すると体は落下する事無く、杖と同じでふわりと浮いた。

重力に逆らうように。まるで無重力空間のように。

その間にも、イフリートはどんどん斬りつけられてゆく。

太く大きな腕、入道雲を思わせる体から血が吹き荒れる。

しかしそれほど大きな体をした魔人からすれば、傷といっても糸くらいの血が噴き出す程度。

致命傷には至らない。

ただ痛みは同じだけ感じているのか、それともちょこまかと攻撃をしてくる見えない物体……かまいたちに苛立ちを感じてか。

再び、イフリートは吼えた。