かまいたち……男はあたかもそこに生き物が存在するように、そう呼んでいた。

目には見えないけれど、これは生きているのだろうか。

生き物なのであれば、もしかしたら捕まえる事が出来るんじゃ……。

なんて、そう思いながらリズムに合わせて手を差し出してみるが、やはりそれは不可能というもの。

相手は目に見えない上、私の体に傷を付けるのも一瞬。

そんなものを捕まえるなど愚かしい。


気がつけば淡いミントグリーンのドレスはざくざくに刻まれ、血の色でまだら模様になっていた。

さっき水攻めに遭ったときの衰弱した体の悲鳴はどんどん大きくなってゆく。


痛いし、怖いし。

もう嫌だ。

なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないのーー?


目頭が振動するようにジンジン響く。

それに共鳴するように、ジワリと視界がぼやけ始める。


「さぁ、早く降参してしまってはどうですか?」


そうだね。

それもいいかもしれない。

だってこれに勝てる自信なんてこれっぽっちも無いし、負けたところで何とかなるんじゃないかな。