妖精と彼女【完】












トウはそっとかざした手を動かし、悠の顔を見つめる。
悠が眠りに落ちていることを確認して、ひとつ息を吐く。






そして、額や喉などに手をかざした。








「……ごめんね、悠ちゃん。俺は、早く良くなるように『手当』しか、してあげられない。俺は、"神様"なのにね……」






その瞳には、慈愛の感情が深く込められているが、その瞳に映る者は、彼を見つめ返しはしない。





今は熱に冒され、その瞼は伏せられている。





かざしていた手をそっとどかし、彼女の穏やかな寝顔を見つめる。
『手当』が効いたのか、いくぶん顔色が良くなっているように見える。





彼は、安心したように少し微笑んだ。

しかし、その表情は暗く沈んだ。







「好きな人に触れたい…なんて、人間みたいな感情が、まだ俺にもあるんだよ……笑っちゃうよね。」





アハハ…と彼は一人で笑うが、全く笑えてはいない。
悲しげな瞳で、彼女を見つめるだけ。









「ねぇ、悠ちゃん。俺は……迷っているんだ……」








もしも、願いが叶うならば……君に触れることのできる、『人間』になりたいよ………


そう呟き、彼は空間から姿を消した。